貿易実務 決済条件 L/C その2

貿易権

○L/C決済のメリット

前回見たように、L/C決済のメリットは

銀行保証決済ですから、輸出側としてはL/Cさえ

入手すれば商品発送(船積み)を安心して実行でき、

B/L等の書類を銀行に持ち込めば、

輸入者側の決済如何に関わらず、商品代金の

回収ができるので、

取り立て回収業務や決済不履行のリスクから解放されることになります。

輸入者側も代金と交換でB/Lを受け取ることができ、

代金を支払ったが貨物を受け取れないという事態は

回避出来ますので、輸入者としても安心できる
決済方法となります。

I/V

○L/C決済のデメリット

1.手続きが煩雑

確実に資金回収できる反面、手続きは煩雑で

手間暇がかかります。銀行経由でL/C本状が

届くまでの時間、そして入手しても書かれている

内容を一つ一つチェックしなければならず、

時に約束と違う内容が書かれていたり、或いは
スペルの間違いなどのディスクレがあった時には、

その都度輸入者側にL/Cの修正(アメンド)要求を出し、

間違いのないL/Cを入手するまでネゴを繰り返さなければなりません。

文字をずらだけの間違いであれば相手側も

容易にアメンドに応じてもらえますが、条件、内容での

食い違いがある場合など、更に頭の痛い

ネゴが必要となります。

また一つのアメンドが他の条件、例えば船積み期限や

L/C期限などに影響を与え、更なるアメンドが必要になるなど

 

ある程度の時間ロスを予め腹積もりしておくことが必要です。

 

またL/Cの読み方などもある程度習熟していないと

ディスクレ(「不一致」を意味するディスクレパンシー (discrepancy) の略)

さえ発見できず、船積み後銀行に持ち込んで

はじめてわかるとなると、支払い拒否されることもありますので、

何の為のL/Cなのか分からなくなってしまいます。

2.船積み前の数量調整ができない

一旦L/Cがオープンされると、船積み直前になって

数量の増減や、「これもついでに追加して」などと他の貨物の

追加など、良くも悪くも商品、数字の調整ができない

こともL/Cの制約条件となるでしょうか。

輸入者側のデメリット

また輸入者側も貨物の引き取りに際して、

書類が銀行経由で送付されて来る為、

特に日中貿易の場合、書類の方が貨物より

遅れて到着することになり、タイムリ-な貨物の引き取りができず、

どうしても時間ロスが発生してしまいます。

コストの面でもB/Lの受け取りが遅れると、

貨物を港に滞留させることになり、無料で留め置き出来る

フリータイム(7日間を目安)をオーバーし、時間ロス

ばかりか超過料金など余分な費用まで発生してしまうという

デメリットが出てきます。

上海空港4

○L/Cのアメンドが間に合わない場合

L/Cはその記載事項の内容はもちろんのこと、

スペル1文字が違っただけでも銀行に買い取りを拒否されてしまいます。

従いL/Cを受領と同時に入念にチェックし、

船積み書類の記載事項及びスペルにディスクレがある場合、

即アメンドを要求することになります。

ただこのアメンドも時間を要する為、緊急対策として

下記方法が考えられます。

1.ケーブルネゴ

はじめに輸入者から同意を取り付けることからはじまり、

買い取り銀行経由発行銀行へアメンド内容をアクセプトするかどうかの確認を取る方法です。

修正箇所を直してL/C全文を再度発行する

アメンドよりはスピーディーです。

2.L/G(Letter of Guarantee)の差し入れ

生産、販売なのどの事情でマッタなしという

状況では、輸出者はL/Gと言ってディスクレが

あった場合でも輸入者が支払いに応ずること、

また万一決済出来ない場合は買い取った代金を

返却する旨を確約した保証状を銀行に差し入れ、

船積みを急ぐことになります。

もちろん輸入者、そして発行銀行にはその旨連絡し

同意を得ておくことが必要です。

 

ただ銀行はL/C受け取りにあたり輸出者に対して

相応の担保を事前に要求していますので、

提示していない場合は着金してからの入金となります。

ルール上相手側に支払い拒否されても文句は言えませんので、リスクが伴います。

 

3.アプリケーションでの船積み

また緊急貨物或いは予算達成で数日内には

なんとか船積みをという場合は、アプリケーションと言って

 

発行銀行が輸入者から受け取ったL/Cの申し込み書を輸入者から送ってもらうことで船積みに踏み切ることもあります。

これはL/Cの本状が届くまで銀行内での手続きに

ある程度の日数がかかる為です。
もちろんこれはL/G覚悟での船積みですので、

輸入者は手なれた相手であることが条件になったり、

また稟議書を持って社内を走り回ったりなど、

かなり慌ただしくなります。

○L/C決済は減少傾向

このようにイレギュラーが発生した場合

「輸入者の同意」がついて回ることになり、

手続きの為の手続きというか、ここまで来ると極論

わざわざL/Cを使う必要があるのかということになります。

もちろんL/Cに勝る安全確実な方法はなく、

公平なルールなのですが、これを優先するばかりに、

他のデメリットも覚悟しなければなりません。

負荷が大きいというのであれば、他の決済方法を

視野に入れてもいいのかもしれません。

かつては殆どの日本の輸出企業ではL/C、

それもL/C at Signtを基本にしており、

それから少しでも外れる場合には、社内決裁が必要であったりと、

たとえ自社の現地法人であってもL/Cを要求していたぐらいでした。

ただL/Cに間違いがあっても輸入者は貨物を急いで

引き取りたいが為に、進んで決済に応じるなど、

L/Cの意味合いもだいぶ薄れてくるようになり、

加えて資本関係などその他の要因もあいまって,

T/Tなどの決済などに切り替えるなど、モノの引き取り或いは

数字の精度を高めることを優先するようになり、

L/Cを選択する割合が以前に比べだいぶ

減少するようになってきたようです。

「百歩碌・中国輸出入実務ワンポイントセミナーから引用」

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