中国輸出入貿易の6大要素 ~中国のWTO加盟時の公約~

中国コンテナ

華東地域(上海・蘇州・寧波・杭州・義烏)

今回は中国のWTO加盟にあたり、貿易貨物に関して中国が公約した主な項目にについて見ていきます。

これを見ることで、現在中国の輸出入貿易の各種規定の背景と実態をより深く知ることが出来るのではないかと思います。

○中国のWTO加盟時の公約

1.輸出入権の届出制への変更

・企業の輸出入権は加盟前は許認可制でしたが、加盟後は届出制への変更が義 務付けられ、基本的には登録さえすれば輸出入者になることが出来るようになりました。

但しモノによっては、輸出入禁止品目、国の独占が認められている品目、或いは登録資本金の規模、必要設備、その他条件など縛りがある品目もあり、全てオープンという訳ではありません。

自社はどの品目の輸出入権があるか調べるには、営業許可証を見れば一目瞭 然。ここに対象となっている品目(カテゴリー)と「輸出入貿易」の文言が入っていれば取り扱い可能とみていいでしょう。

また自社の取り扱い品目に含まれないモノでも、特に輸出入の監管条件が指定されていないモノは、税関も商検局も企業にその資格があるかどうかまでは調べませんので、故意如何に関わらず、輸出入者としてオペレーションできてしまうのが実際です。

ただ万一工商局に見つかるとペナルティーが課せられますので、大事に至らない為にも、やはりここはレギュレーション通りに手続きしておくことが必要でしょうか。

*この政府系からのペナルティーですが、そのほとんどは内部密告によるものとのことで、ひどい場合はマッチポンプ型もあり、また輸出入スタッフのネコババと合わせて、定期的にチェックすることをお勧めします。

 

2.国家独占輸出入品目の規定

・事前にWTOに申請し認められれば、ある一部品目に限り国が独占して輸出入を行えるというもの。
2016年現在では原油、植物油、砂糖、タバコ、米、大豆、トウモロコシ、お茶などの予め認められた品目に限り、また決められた数量に限り、国営単位のみが取り扱えるというものです。

所謂「配額内」と呼ばれているのがこの数量枠のことで、数量ばかりか関税までも「配額外」(枠外)とは極端な違いがあります。例えばコメでは枠内輸入の関税が1%であるのに対し、枠外では65%となっており、事実上国営単位以外の一般企業は取り扱えないという状態になっています。

貿易権

3.価格査定の原則及び関税率の低減

通関時頭を悩ませている問題の一つがコレ。関税率もさることながら、関税計算する上でベースとなる貨物の価格をどう審査するのか、WTOの規定「税関査定価格」(海关估价协议)の中でその細則が決められています。 

この規約では「実勢取り引き価格」を課税ベースとすることを原則としなが らも、サンプル品のように無償扱いのモノや、型落ちし評価損しているモノをどうジャッジするのか等が決められています。

この税関査定のルールはざっくりですが下記のような考え方をベースにしています。

1.実勢取引き価格の採用 場合により依拠する資料、データの提示が必要

2.1で判断できない場合、直近の同一仕向け地への価格

3.1,2で判断できない場合 異なる商流、最大輸入数量の価格

4.1,2,3で判断できない場合 類似貨物の価格

5.無償、ディスカウント貨物の場合 生産コストの算出(材料、工具、消耗材、ソフト技術費用をベースに算出)

 

税関ではこれらタテ、ヨコのデータを数年間に渡り保有しており、これらをベースに適正価格を割り出すことになります。上記の内容を実際の現場での運用はどうなっているのか誤解を恐れずにいうと、

貨物価値(货值)=貨物の輸入時の時価、価値をベースとする

価格レンジ=価格はある一定の幅を持たせている

ということが言えるかと思います。実際の中国の価格査定では、申告した貨物価格をベースに税関本部(审价中心)でチェックし、

・申告価格が認められた場合 →  納税単の出力

・申告価格が認められない場合 →  突き返されて戻ってくる

という取り扱いを受けます。従い納税単が出てくれば価格審査にパス、パスしない場合は差し替えされ再申告となります。価格の指定はされません。異議がある場合は根拠となる資料をベースに交渉することも可能となっています。

 

○無償貨物或いはディスカウント貨物の価格査定

これは「海关估价协议」の第8条で定められたものですが、規定通りにしたのでは、気が遠くなるような過程を踏むことになりますので、上述した「貨物の価値」という点から値付け、申告することになります。

「無償貨物は無税ではない」ことは、大元はここで定義されています。

 

○同一貨物の異なる申告価格

実際の輸入時に同一貨物の申告価格についてのよくある誤解として

・同一貨物は、前回と同じ価格を使わなければならない

・同一貨物は、異なる輸入者でも同一価格でなければならない

等ありますが、WTOの精神に照らせば「時期の違い、コンサイニーの違いなどによって、同一貨物であっても価格変動を認める」とされています。

 

つまり実際の商取引では需給関係、為替、季節要因、購買数量など、多々要因により「取り引き価格」は変動しているのが実情ですので、WTOはこれを反映し「実勢取り引き価格」を原則としている訳です。

 

ただ国、税関の立場からすると、関税を故意に低く抑える為に申告価格を変更しているのではないかという嫌疑、その立場も理解できるところです。

従い一方では脱税を防ぎ、一方では公平な措置という観点から出たのが、価格レンジという考え方になります。

 

○価格変動の根拠

ここはまさに「せめぎ合い」のところで、ただデリケートな項目であることは変わりなく、はっきりと線引き出来る領域ではないことを認識した上で、何よりその根拠を明示できるようにしておくことが必要となります。

 

価格審査は申告されたデータのみ(貨物実物は見ない)でジャッジされ、またパスしたとしてもタテ(時系列、実績)のデータでチェックされますので、過去に遡り問い合わせが来ることもあり、実情を反映しており、筋が通る、

変動の根拠を示す資料を準備しておくことが肝要です。

○その他の税関価格算定方法

この課税ベース価格(「完税価格」と呼んでいます)には、この実勢取り引き価格の他に「最低価格」と「算定価格」の2つの方法があります。 

 

最低価格

申告価格が最低価格を下回っても最低価格を採用

 

算定価格

申告価格は参考程度、税関が決めた価格を採用
最低価格とは申告価格が税関で決めた最低価格を下回った場合、最低価格を完税価格とし、算定価格とは申告価格が幾らであっても、税関が決めた価格を完税価格とするというやり方です。

WTO加盟前の中国では1988年から「最低価格」を、1996年からは「算定価格」を採用してきた経緯がありますが、WTO加盟にあたり今の「実勢取引価格」に変更しています。

○関税率の低減

 

平均関税率を2001年の14%から2005年の9.8%へ公約通りに達成。内訳は工業品が13%から9.3%、農産品は19.9%から15.5%へ低減を実施。

このうち農産品は2004年に前倒しで達成、一部工業品は若干の遅れはあるものの、自動車関連が2006年7月1日をもってCBU25%、CKD10%に、最後の一部化学工業品も2008年をもって達成しています。

「百歩碌・中国輸出入実務ワンポイントセミナーから引用」

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